流出油回収処理材の 微生物分解処理技術実用化に関する研究(第2報)
斉藤雅樹
*・玉造公男
*・小倉秀
**・木本弘之
**・永水堅
****
地域資源担当・ **
( 独) 海上災害防止 センター・ ***
ぶんご 有機肥料㈱
Research a nd Development for Utilization and
Biodegradation Disposal
of
Sugi Bark Sorbent
(
2
nd
Report )
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i s as t er Pr event i on Cent er ,
***Bungo Yuki H
i r yo, I nc .
要
旨
油水から油を除去する資機材である 油吸着材を,杉樹皮を原料として実現する着想は,当センターでの研究を基 礎に平成10年度以降,日本財団などの支援により( 独) 海上災害防止 センターと共同で実用化研究 が行われ,その成
果をもとに,ぶんご有機肥料株式会社 (大分県竹田市)によって製造・販売されている.使用後処分時 における環 境負荷低減を目指し,微生物分解処理技術の研究開発に平成13年度に着手した.本研究ではC重油を吸着させた杉
樹皮製油吸着材 の産業廃棄物用鉄製容器内における微生物分解実験により ,開始時の油分濃度47, 000± 4, 900ppmは, データはバラつきが大きいものの 約50日以降 に5, 000∼20, 000ppmを中心とする 範囲に移行し,128日時点 で5, 000∼
8, 000ppm程度となり ,当初の1/ 2∼1/ 4まで低下することが判明した.
1.
はじめに
我が国に広く分布する「杉」の木は,木材価格の下落 による林業の停滞や花粉症 の蔓延など,これまで 芳しく
ないイメージがあったが,ここへ来て原油価格の高騰や 環境意識の高まりなど社会情勢の変化に伴い,バイオマ
ス資源として再び注目を集めつつある.
その杉を製材する際に大量に発生する杉樹皮を原料と
する油吸着材は,平成9年に発生したナホトカ号事故直後 に開始した当センター での基礎的研究をもとに,( 独) 海
上災害防止センターと共同で,平成10年度に日本財団調 査研究事業として 本格的に開始され,平成12年度に実用
化し,製造が開始された.現在,特許実施許諾先 である ぶんご有機肥料株式会社(大分県竹田市)をメーカーと
して「杉の油取り(すぎのゆとり)」の品名で全国に普 及している.
杉樹皮製油吸着材の特徴は,全国第2位の生産量を誇る 大分県の杉の樹皮部分を原料に用い,従来の石油原料製
品並みの吸油性能 ,価格を実現したところにある .杉樹 皮製油吸着材の生分解性である特徴を活かし,現状の焼
却処分よりさらに 環境負荷 の小さい処分方法,すなわち 微生物によって油と油吸着材とを分解処理する技術の実
現が目標となっている.
平成13年度までの日本財団調査研究事業,平成14∼17
年度の( 独) 海上災害防止 センター 委託事業を行い,使用
後の油吸着材および吸着した油を,微生物活動によって 分解処理する技術の開発を行ってきた
1) 2)
.
これまで一連の事業で実施している調査研究において 目指しているのは,生分解性を持つ杉樹皮製油吸着材の
微生物分解処理技術・システム の確立である.すなわち , 油濁発生現場から運搬された使用後の油吸着材を,「閉
鎖された空間」において微生物,栄養源,および 活動に 適した環境を与えて,速やかに分解処理を行い,安全基
準範囲内に達した残留物を環境(例えば土壌)に戻す, というものである .当グループでは,バーク堆肥製造工
場における微生物活動ヤードをそのまま適用することを 実用モデルとして 捉え,昨年度まで実験を重ねてきたと
ころである.
今年度は,昨年度までの研究成果でほぼ実用性が確認
された杉樹皮製油吸着材の微生物分解処理技術 について , より低コストで無駄のない システムを開発するべく,従
来と逆の輸送の仕組みについて検討した.すなわち,こ れまで目指してきたモデル は,事故における油などの回
収物を処理場まで運ぶ方式である.しかし,海洋油濁事 故での回収物における油の占める割合は,事故の実測値
で14∼21%程度
3)
,ナホトカ号事故では数%
4)
そこで,油など回収物 を一旦陸揚げし,近辺に適切な 場所を確保し,そこに微生物分解資材 であるバーク堆肥
の方を運搬し,分解処理を行う方式を検討することとし た.この方式は,すでに昨年度に一部,100m
3
規模のバー
ク堆肥パイルを臨海地域に設け,その場所で油分解処理 を試みており,通常の油分解処理サイトと同様に分解処
理が技術的には可能であることを確認している.今回は 密閉可能でかつ持ち運びが可能な容器(産業廃棄物用鉄
製容器,コンクリートミキサー車)を用いて,その内部 でバーク堆肥による微生物分解処理を行い,油分を減少
させる仕組みについて実験を行い,実用性を確認するこ ととした.
2.
容器内における微生物分解処理実験
2. 1 誤差評価
2. 1. 1 各測定値の誤差評価
各測定値における誤差評価を行った.
バ ー ク 堆肥 の 水 分 率 は実 験 に よ り 62± 3%( 相 対 誤 差
5%)とした.採取したバーク堆肥を105℃の乾燥機に入 れて絶対乾燥状態 とし乾燥重量を測定して当初の水分量
を推算し,水分量/当初重量により算出した. バーク堆肥の嵩比重は実験により0. 37± 0. 01g/ cm
3
(相
対誤差3%)とした.採取したバーク堆肥を2L容器に入れ 重量を測定し,算出した.
ホイールローダのバケット 容積は,バケット形状から, 2± 0. 2 m
3
(相対誤差=10%)とした.数値はメーカーカ
タログによる.
C重油および吸着マット浸漬用の大型容器の計量は十
分精度の高い機材を用いたため,誤差は無視できるもの とした.また,サンプリングに起因する誤差については
実験により相対誤差68%とした. 2. 1. 2 油分濃度の誤差評価
これまで述べた各誤差要因を総合する.独立な複数要 因が重なるときは誤差を二乗和で算出している.
初期にC重油を投入したことにより付加された油分は, ホイールローダのバケット (相対誤差 =10%)での作業
回数(例えば20 m
3
の場合10回)により求めたバーク堆肥 パイル容積,バーク堆肥の嵩比重(相対誤差=3%),投
入C重油の重量(相対誤差≒0)から求めているため,相 対誤差=10%と考えられる.
また,実験期間における油分測定にはn- ヘキサン抽出 重量法用いるが,バーク堆肥そのものが含んでいるn- ヘ
キサン可溶物も同時に「油分」として 検出されるため, C重油投入前のバーク堆肥についても 「油分濃度 」を測
定 し て お く 必 要 が あ る ( こ れ を バ ッ ク グ ラ ウ ン ド と 呼 ぶ ) .今 回の 測 定 値 は, 2, 100ppm- dr y , 800ppm- wet (相
対誤差65%)と,比較的高めの数値を示している. 以上より,実験開始段階すなわち初期の油分濃度は,
投入C重油によるものとバックグラウンドを合計した値 と考えることが出来るが,この相対誤差は二乗和平均に
より,11%と算出される.
各測定時点における推定油分濃度は, n- ヘキサン抽出
重量法により得られた実測値から,バーク堆肥からのC 重油回収率77%(相対誤差=4%)で除し,水分率(相対
誤差5%)からdr y換算することによって求めるため,相 対誤差=6%と考えられる.また,サンプリングにおける
誤差を算入すると ,各測定時点における推定油分濃度は 相対誤差=68%となる.また,バーク 堆肥自身の持つ溶
媒溶出分 (2, 100±1, 400ppm- dr y )も 誤差を 考慮し ,グラ フ上で帯表示とした.油分濃度の低い測定値では影響が
大きいため,結果の評価において注意が必要である. 2. 2 実験の方法(実験1)
鉄製容器内のバーク堆肥原料の中に吸油後の油吸着材 を埋め込み,バーク堆肥原料で被覆した後,定期的に攪
拌(切り返し)を行い,油分濃度の変化を調査した.用 いた鉄製容器 は,汎用のアームロール用鉄製容器であり ,
内寸は,長さ7. 8m× 幅2. 35m× 高さ1. 6m,容量29. 3m
3
のも のである.この内部に吸油後の吸着マット(杉樹皮製油
吸着材)と共に,容器の7分目(高さ1. 1m)までバーク堆
肥原料を充填した(バーク堆肥容量20. 1m
3
,約7. 5t ).概
念図をFi g. 1 に示す.
実験のフィールドは,㈱大総(大分市 )の産業廃棄物
処理場敷地内に設けた.攪拌にはクラムシェルなどの重 機を用い,バーク 堆肥の上側からすくい取ったものを容
器内で順次移動させる 方法で行った.頻度は約2週間に1 回であり,この際に油分測定のための サンプリングも同
時に行った.
以下の手順に従って,吸着マットをバーク堆肥に埋め
込んだ.
・大型容器(ドラム缶)を計量する
・大型容器に吸着マットを入れる
・大型容器に計量したC重油を注ぎ,吸着マットに吸
着させる
・吸油後の吸着マット を大型容器から取り出し各パイ
ル断面に規定枚数並べる
・大型容器内のC重油の減量分を計量する
・バーク堆肥断面に吸着マットを並べ終わるとバーク 堆肥で規定の間隔(高さ)だけ被覆し,順次上の断
面に移り,同様の作業を行う
に吸着させて実験に供した.バーク堆肥はホイールロー ダ の バ ケ ッ ト で 容 積 を 計 量 し た 約 20. 1m
3
( 相 対 誤 差 =
10%)ほどを用いた.嵩比重が約0. 37(相対誤差=3%) であることから約 7. 4± 0. 7t ( 2. 8± 0. 3t - dr y に相当)で
あると推定される .バーク 堆肥原料は発酵開始から数ヶ 月経過した微生物活動の活発なものと ,昨年度までの油
分分解実験に供した分解残留物を混合したものを 実験に 使 用 した (油 分 濃 度 2, 100ppm- dr y ,800ppm- wet ,相 対 誤
差65%).作業の様子をFi g. 2 に示す.
バーク堆肥全体の実験開始時の油分濃度の平均値は約
47, 000± 4, 900ppm- dr y(18, 000± 1, 900 ppm- wet )と推定 される.
Fi g. 1 容器内への吸着マット設置の概念図
Fi g. 2 吸着マットを並べる様子(実験 1)
バーク堆肥は製造工程 において,好気発酵に要する酸 素供給のために定期的 に攪拌(切り返し)を行っている .
活発な微生物活動に資するため,本実験においても2週間 に1回の頻度で攪拌を行った.クラムシェルなどの重機を
用い,バーク堆肥パイルの上側からすくい取ったものを
容器内で順次移動 させる方法で行った.なお,バーク堆 肥と埋め込まれた 吸着マットは同様に扱って撹拌した.
また,攪拌の際に油分測定 のためのサンプリング も同時 に行った.バーク堆肥を均等に3セクションに分け,セク
ション毎に均等に3断面に分け,各断面 から3箇所ずつサ ンプリングを行った.
測定項目は以下のとおりとした.
①油分濃度(n- ヘキサン抽出重量法):
2 週間に 1 回程度(攪拌時毎),128 日後まで計測
②目視観察など(油の臭気,手指への油分付着など)
③パイル内の温度(2 週間に 1 回)
油分の測定は n- ヘキサンによるソックスレー抽出を用
いた.①の分析作業は㈱住化分析センターに,③は近畿
環境興産㈱が行った.①の油分濃度については「1」で
述べた誤差評価に照らした数値で検討した.温度の測定 は,セクションごとに 3 箇所の測定点においてけるパイ
ル表面から 60∼70cmの深さ地点にて行った.
2. 3 実験の方法(実験 2)
常時移動可能であり,かつ常時攪拌も可能である汎用
装置であるコンクリートミキサー車に着目し,このタン
ク内を微生物分解処理の実験場所とし,吸着マットに吸 わせたC重油を投入したバーク堆肥をタンク内に投入し
て試験的に油分解の実験を試みることとした.
バーク堆肥原料の中に吸油後の油吸着材を埋め込み,
十分に攪拌した後,コンクリートミキサー車のタンク容
器に投入する.その後,2 週間に 1 回の定期的攪拌(切り 返し)を行い,油分濃度の変化を調査した.実験装置で
あるコンクリートミキサー車の設置場所として,バーク
堆肥工場敷地(大分県竹田市)の一部を借り受け使用す
ることとした.
攪拌はコンクリートミキサー車のタンクを回転させる
ことで行った.頻度は約 2 週間に 1 回である.また,2∼
4 週間に 1 回程度,油分測定のためのサンプリングを行っ
た.なお,吸着マットのバーク堆肥パイルへの埋め込み
は別に地上で行い,その後,クラムシェルにてタンク内
に投入した(Fi g. 3).
用いた油はC重油 42. 5kg(約 47. 2L,比重 0. 9)で,製
品版の「杉の油取り」マット型(45cm x 45cm)合計 50
枚に吸着させて実験に供した.バーク堆肥は約 5. 0m
3
(相
対誤差=10%)ほどを用いた.嵩比重が約 0. 37(相対誤
差=3%)であることから約 1. 9± 0. 2t (0. 7± 0. 07t - dr y に相当)であると推定される(油分濃度 2, 100ppm- dr y,
800ppm- wet ,相対誤差 65%).
バーク堆肥全体の実験開始時の油分濃度の平均値は約
63, 000± 6, 400ppm- dr y(24, 000± 2, 400ppm- wet )と推定 される.
高さ 1. 1m
バ ー ク 堆 肥 を 均 等
に 5 層に分け、間の
4 断面に吸着マット
各 50 枚ずつを設置 バーク堆肥
アームロール用鉄製容器
そ れ ぞ れ の 断 面 に 、 外 輪 縁
を 30cmあけ、中央部に重なら
ないように 合計 200 枚のマッ
ト を 置 く 。 ( バ ー ク 堆 肥 全 体 サイズ:長さ 7. 8m× 幅 2. 35m
× 高さ 1. 1m、20. 1 m
3
Fi g. 3 タンクに投入する様子(実験 2)
2. 4 実験の結果(実験 1)
実験開始時(0 日,油投入直後)における計算上の油 分濃度は,約 47, 000± 4, 900ppm- dr y である.1 回目のサ
ンプリングは最初の攪拌が行われた開始後 2 週間時点に
行った.既に吸着マットの原形はほとんど留めておらず ,
マット内に含まれるパーライトの存在により,原位置が
判明する状況であったが,一部で十分にバーク堆肥に被 覆されていないものがあり,マット形状を留めているも
のも散見された.
この後,2 週間ごとに行う攪拌時にサンプルを採取し,
それぞれの油分濃度を測定した.油分濃度の変化を Fi g. 4(相対誤差=6%で表記),Fi g. 5(同 68%)に示す.
0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 70000 80000 90000 100000 110000
0 50 100 150
DAY
p
p
m
S ec tion A
S ec tion B
S ec tion C
0 day (E xp.5) c alc ulated value
Fi g. 4 油分濃度の変化(実験 1,相対誤差 6%)
0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 70000 80000 90000 100000 110000
0 50 100 150
DAY
p
p
m
S ec tion A
S ection B
S ection C
0 day (Exp.5) c alc ulated value
Fi g. 5 油分濃度の変化(実験 1,相対誤差 68%)
相対誤差 6%で表記した Fi g. 4 ではバラつきが大きく
各地点の値のエラーバーが重ならない部分がある.測定
値から真の値を推測する上では,サンプリング要因を加
味して相対誤差 68%で表記した Fi g. 5 を採用した方が 妥当と思われる.概して測定値のバラつきが大きいが,
Fi g. 5 では油分の減少傾向をエラーバーの範囲内で読み
取ることができ,サンプリング要因によるバラつきと解
釈することが可能である.一方,最終の 128 日時点では
測定値のバラつきが小さくなっている.原因として,微
生物分解が進んで油塊が小さくなることや攪拌回数が増 えてバーク堆肥内の油分濃度がより均一になることなど
が考えられる.しかし,これ以外の値はバラつきが大き
く,128 日時点の測定値(5, 000∼8, 000ppm程度)のみを
もってこれ以降の傾向を判断することは難しい.
計算上の開始時の油分濃度は約 47, 000± 4, 900ppm- dr y であり,その後,この値を下回る測定値がほとんどであ
る.また,開始直後の各地点における油分濃度の最良推
定値はバラつきが大きいものの,徐々に減少し,50 日付
近で 5, 000∼20, 000ppmを中心とする範囲に移行する.一
方,86 日時点で特異的に高い値が検出されており,また,
100 日時点近辺でも 20, 000ppm前後の値がいくつか確認さ
れている.このため,減少傾向は認められるが,特異的
に高濃度の油分を有するバーク堆肥の塊状部位が点在し
ている可能性も考えられる.
0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 70000 80000
0 50 100 150
DAY
p
p
m
S ec tion A
S ec tion B
S ec tion C
0 day (Exp.6) c alc ulated value 油の臭気であると判別可能な程度に感じられた.約 100
日後は臭気が変化しており,もとの投入物が重油である
ことを知らない人間には油の臭気どうか判別がつかない
状態に変化していた.この時点で手指への油の付着は感
じられず,周囲の水溜りに油膜は観察されなかった. 次に,バーク堆肥パイル内の温度変化を Fi g. 6 に示す.
実験当初からバーク堆肥の活性な状態とされる 60∼70℃
前後ではなく,40∼45℃前後となった.その後,徐々に
温度が低下する傾向が見られ,開始後 86 日経過時点から はほぼ 20℃以下を推移し,112 日時点以降は 10℃前後と
なった.温度が低下する原因は,微生物活動の低下,外
気温の低下などが考えられる.
なお,今回(実験 1)の温度変化の傾向は,昨年度まで
に実施した 100m
3
規模の実験と比して概ね 30℃程度低め
であることが大きく異なっている点である.理由として は明確ではないが,実験規模が 1/ 5 程度であり,ある程
度の堆積が必要とされるバーク堆肥の微生物活動が期待
されるほどに活発に行われていないことが考えられる.
その原因としては,規模の小ささによる温度や水分の安
定性欠如や,バーク堆肥形状(直方体=6 面体)の 5 面ま でが遮蔽されていることによる酸素供給不足,また,今
回の実験の初期の油分濃度がこれまでで最も高いことも
関係している可能性がある.
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 45.0 50.0
0 50 100 150
DAY
℃
Point No.1
Point No.2
Point No.3
Fi g. 6 バーク堆肥パイル内の温度変化(実験 1)
2. 5 実験の結果(実験 2)
実験開始時(0 日,油投入直後)における計算上の油
分濃度は,約63, 000± 6, 400ppm- dr yである.この後,約2 ∼4週間ごとにサンプルを採取し,それぞれの油分濃度を
測定した.油分濃度の変化をFi g. 7(相対誤差=6%で表 記),Fi g. 8(同68%)に示す.
0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 70000 80000
0 50 100 150
DAY
p
p
m
S ec tion A
S ec tion B
S ec tion C
0 day (E xp.6) c alc ulated value
Fi g. 7 油分濃度の変化(実験2,相対誤差6%)
Fi g. 8 油分濃度の変化(実験1,相対誤差68%)
実験1と同様に,相対誤差6%で表記したFi g. 7 ではバ
ラつきにより各地点の値のエラーバー が重ならない部分 があり,サンプリング要因を加味して相対誤差68%で表
記 し た Fi g. 8 を 採 用 し た 方 が妥 当 と 思 わ れ る .Fi g. 8 では油分の減少傾向をエラーバーの範囲内で読み取るこ
ことが可能である.
この実験結果は,昨年度も含め,これまでの実験に比
べて大きな特徴がある.それはグラフ 上で見る限り,非 常に安定した,変動の少ないデータであるということで
ある.50日以降は10, 000ppm以下の値となっている.しか し,初回の測定値である19日時点においても3つの測定値
のうち,2つまでは10, 000ppm以下の値であるため,にわ かにこのデータが「油分の減少傾向」であるのかどうか
は判断 がつきかねる.実験開始時点の 63, 000± 6, 400ppm は計算上の値であり,実測値どうしの 比較ではそれほど
大きな変動がないとも言える.
この原因として,まず攪拌方式が考えられる.これま
での実験のクラムシェルやパワーショベルでのパイル攪 拌に比して,本実験ではコンクリートミキサー車のタン
クを回転させる攪拌方式であり,バーク堆肥内が一様に なりやすいことは 容易に想像がつく.加えて,全方位が
壁に囲まれた状態であるため,それらの壁に粘調なC重 油が付着したために,初回測定値から低い油分濃度が検
出されたのではないかという疑念がある.つまり ,分解 されて油分が減少したのではなく,付着したことが原因
である可能性である.それを裏付けるものとして ,温度 変化のデータがある.50日以降のタンク内温度は8∼13℃
であり,バーク堆肥の通常の発酵適温 とされる範囲から 大きく逸脱している.このため,本実験における 低い油
分値の解釈は微生物分解そのものよりも主に他の要因に よるものではないか,と考えられる.
しかし,特筆すべきは 安定して油分が測定されている ことであり,これがコンクリートミキサー車特有 の優れ
た攪拌機能に依るものであるとすれば ,今後のバーク堆 肥による油分解方式の改良に示唆を与える現象として注
目すべきであると考えられる.
3.
まとめ
本研究により得られた知見は以下のとおりである.
・産業廃棄物 に使用される鉄製容器での実験においては ,
杉樹皮製油吸着材に吸着させたC重油は,20. 1m
3
バー
ク堆肥における微生物分解処理により,開始時の油分 濃度 47, 000± 4, 900ppmは約 50 日以降に 5, 000∼
20, 000ppmを中心とする範囲に移行し,128 日時点で
5, 000∼8, 000ppm程度となり,当初の 1/ 2∼1/ 4 まで低
下することが判明したが,データはバラつきが大きい ため,明確に油分が減少すると断言するには今後の実
験を待つ必要があると考えられる.また,攪拌方式に
ついて課題があると考えられる.
・試験的要素が強い内容として実施した汎用コンクリー
トミキサー車における実験においては,杉樹皮製油吸
着材に吸着させたC重油は,5m
3
バーク堆肥における微
生物分解処理により,開始時の油分濃度 63, 000±
6, 400ppmは 50 日以降は 10, 000ppm以下の値となった.
しかし,初回の測定値である 19 日時点においても
10, 000ppm以下の値であり,油分が減少傾向にあるのか どうかは現状では判断がつきかねる.一方,安定して
油分が測定されている特徴が見られ,優れた攪拌機能
に依るものであり,バーク堆肥による油分解方式の改
良に示唆を与える現象として注目される.
すでに微生物分解処理技術は,製造,使用,処分時に
おける熱処理が原則として不要な環境負荷の低い油回
収・処理システムとして実用性がある程度確認されてい
る.社会に広く受け入れられるために,今回,実現の可
能性を検討した「バーク堆肥のデリバリー方式」につい ては,実施規模やパイリング方式などさらに検討が必要
な課題があげられるものの,成否を決める範囲が一部明
らかになったと言える.
引き続き,「杉樹皮」という生分解性材料から成る環
境負荷の低い油吸着材および微生物分解処理技術のさら なる研究開発を進め,社会還元を目指すこととしたい.
謝
辞
本研究に支援を頂いた日本財団に御礼申し上げます. また,貴重な助言を頂いた同財団・山田吉彦氏,東京大
学・山口一教授に御礼申し上げます.
参考文献
1) 斉藤雅樹他:流出油回収処理材の微生物分解処理技
術実用化に関する研究,平成 17年度大分県産業科学
技術センター研究報告,2006
2) 斉藤雅樹他:杉樹皮製油吸着材の微生物分解処理技
術に関する研究,平成 16年度大分県産業科学技術セ
ンター研究報告,2005
3) ( 独) 海上災害防止センター:杉樹皮製油吸着材の有
効利用及び微生物分解処理技術に関する調査研究報 告書Ⅱ, 第 4 章, 2005
4) 内藤林 他:ナホトカ号の事故に関する調査研究報告
書 ( ナ ホ ト カ 号 の 事 故 に 関 す る 調 査 研 究 会 編 ) ,